名古屋大学 哲学研究室
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西洋哲学史基礎演習Ⅰ

プラトン『テアイテトス』第二部を読む

科目名 西洋哲学史基礎演習Ⅰ
科目名(英語) Introductory Seminar on Western Philosophy I
担当教員 岩田 直也
担当教員(英語) IWATA Naoya
開講期 春学期
曜日・時限 月曜 4・5時限
学部・大学院区分 人文・博前
科目区分 専門科目
単位数 2
対象学年 2年生以上
授業形態 演習
他学部生の受講の可否
コースナンバリングコード HUMPH5105J
カリキュラム年度 2022年度入学以降
教育プログラム・分野 哲学倫理学P
授業開講形態 A-1)対面授業科目(対面のみ)

講義題目

プラトン『テアイテトス』第二部を読む

授業の目的

西洋古代哲学における原典を古典ギリシア語で読み解き、註釈や研究論文などの関連文献も参照しつつ、その内容について自らの見解を展開する能力を身に着けることを目的とします。 本年度は、古典文献学(フィロロジー)の伝統的な手法を基盤としつつ、最新の生成AIや学術検索技術を「研究支援ツール」として導入します。AIによる文法解析を辞書や文法書に基づいて批判的に監査(Audit)し、また膨大な二次文献から関連する論点を効率的に収集・整理する手法を実践することで、原典解釈の精度と深度を飛躍的に高めることを目指します。

授業の目的(英語)

Through this course, students will learn how to read original texts in ancient philosophy, consulting commentaries and research papers, and to develop their own ideas about them. This year, while grounding ourselves in traditional philology, we will utilize Generative AI and advanced research tools to support our study. By critically auditing AI-generated grammatical analyses and efficiently gathering relevant literature, students will enhance both the precision and depth of their textual interpretation.

到達目標

・西洋古代哲学の原典を、言葉の細かいニュアンスの違いにも注意しながら、古典ギリシア語を用いて正確に読み解くことができる。 ・AIツールによる文法解析結果を、辞書(LSJ等)や文法書(Smyth等)と照らし合わせ、その誤りを指摘・修正できるレベルの文法力を養う。 ・Deep Research等のツールを活用し、特定の哲学的概念に関する欧米の主要な先行研究や並行箇所(Primary Sources)を網羅的に調査・整理できる。 ・複雑な哲学的主張を現代的な視点とも比較しつつ分析し、その評価を明晰に他者に表現できる。 ・現代のわれわれとは非常に異なる古代の思考法に関心をもち、尊重する態度を持って接することができる。

授業の内容や構成

プラトン『テアイテトス』は「知識(エピステーメー)とは何か」を主題とする対話篇であり、現代認識論の源流とも言える重要著作です。本演習では、知識の定義をめぐる議論が難航し、アポリア(行き詰まり)へと向かう中盤の「第二部(187b-201c)」を集中的に読みます。 特に本箇所で展開される「蝋板(The Wax Block)」と「鳥小屋(The Aviary)」の比喩は、誤った思いなし(誤謬)がいかにして成立するかを説明するための野心的なモデルです。感覚知覚と記憶痕跡の不一致、あるいは潜在的知識と現実的知識の区別といった論点は、アリストテレス以降の哲学史、とりわけストア派の認識論(印象と同意)へと批判的に継承される重要なトピックです。本演習では、これらの議論を緻密に分析し、プラトンがなぜ最終的にこれらのモデルを放棄せざるを得なかったのか、その哲学的帰結を検討します。 【授業の進め方:研究ツールとしてのAI活用】 本演習は、従来の「原典精読」に、最新の「AI活用」を組み合わせて行います。AIツールを「補助輪」として使うことで、語学的な負担を減らしつつ、テキストの哲学的な内容に深くアプローチします。 原典読解: 毎回テキストを少しずつ読み進めます。古典ギリシア語の初学者やブランクがある方でも無理なくついていけるよう、文法事項の基礎も丁寧に解説します。また、生成AIによる文法解析などの補助ツールも活用しますので、語学力に不安がある方でも安心して参加できます。 AI活用の実践: 参加者には、AIの出力結果(構文解析や文献調査)を検証する役割などを担ってもらい、単に「訳す」だけでなく、最新ツールを使って「調べる・考える」プロセスを体験してもらいます。 「語学の授業」というハードルを感じすぎず、むしろAIという新しいパートナーと共に、古代の哲学的な問いを一緒に考えていく場として気軽に参加してください。 【授業計画】 第1回:ガイダンス(テキスト、AIツールの学術的利用法と「文法監査」の手法説明) 第2回~第15回:テキストの読解と内容の議論 (範囲:Theaetetus 187b - 201c)

履修条件・関連する科目

授業を履修するためには、古典ギリシア語初級を修得しているか、その内容をある程度理解していることが必要です。 また、授業内でPCまたはタブレットを使用するため、持参できることが望ましいです。

成績評価の方法と基準

平常点を100%として評価し、100点満点中60点以上を合格とします。 平常点は、以下の要素を総合的に評価します。 1.授業への参加と貢献(訳読への取り組みや、文法・内容に関する質問・発言など)。 2.AI活用課題の報告(担当回におけるAI監査や文献調査のレポート内容)。 3.哲学的議論への参加。 ※語学の完成度そのものよりも、ツールを活用してテキストを理解しようとするプロセスや意欲を重視します。

教科書・テキスト

Duke, E.A. et al., Platonis Opera, vol. 1. Oxford Classical Texts, 1995.

参考書

Burnyeat, Myles and Levett, M. J., (1990), The Theaetetus of Plato, Hackett, Indianapolis. その他の詳細な参考文献は、初回授業の時に紹介します。

課外学習等

予習として、全員が毎回テキストの指定された範囲を和訳できるよう(辞書を引き、文法を確認して)準備してきてください。初学者には十分配慮します。 担当回には、指定されたツールを用いて「文法監査レポート」または「文献調査レポート」を作成し、授業で報告できるようにしてください。 復習としては、授業での議論と調査結果を統合し、テキストの論理構成を自身のノートに整理しておくことを推奨します。

履修取り下げ制度

利用する。『履修取り下げ届』を期日までに提出した場合は原則「Wもしくは欠席」となりますが、同届を提出しない場合は成績評価が行われ、合格基準に達しない場合は「F」となります。

備考

本演習で実施するAI活用メソッド(文法監査・文献調査)は、すべて無料の公開ツールの範囲内で実施可能です。授業のために個人的に有料プラン(ChatGPT Plus等)に加入する必要はありません。 隔週開講。